小川哲『言語化するための小説思考』読了。
薄いけれど、とても興味深い思考がいっぱい詰まった本であった。作者の人間性と知性が垣間見える。その技巧性の卓越さに感嘆しつつ、その時代性と普遍性と、一方の自分を重ねてしまう。
まあ、要するに、自分も小説を書こう(書ける)と改めて欲望させてくれた次第。それがこの本が良書である由縁。
あとがきより
一般的な「創作術」についての本に書かれているような、その技術を適切に用いて、読者の欲望を満たす作品にも価値はあると思うけれど、市場がそればかりになってしまうのは残念だ。読者の欲望そのものを変質させ、読む前と読んだ後で世界が違って見えるような、読者の価値観そのものに関与するだけの深いコミュニケーションに成功する本がたくさん生まれてほしいと思っている。だからこそせめて、あなたの頭の中にあるイメージを求めている人が一万人いるなら、その一万人に正確に伝わる文章を書いてほしい、と思う。

