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  • 『フーコーの振り子 上』by ウンベルト・エーコ

    『フーコーの振り子 上』by ウンベルト・エーコ

    ウンベルト・エーコの長編2作目『フーコーの振り子 上』(1988.邦訳’93)読了。
    14世紀が舞台の『薔薇の名前』と打って変わって、20世紀の出版社が舞台。そこで繰り広げられるテンプル騎士団や十字軍等の圧倒的な幻惑的歴史的オカルト与太話の数々。
    そんな蘊蓄を語りたい(遊びたい)が為の場の小説。
    エーコにとって小説というのは遊戯場なのだ。心底憧れる。


    臆病でいられるのは、他人の勇気が状況にそぐわない空虚なものに思われるからなのか、それだったら、思慮分別というものが人間を臆病にさせることになるし、絶好の〈機会〉を窺いながら、それが〈機会〉かどうかの判断を下すために人生を過ごしているかぎり、〈機会〉を逸してしまうことになる。〈機会〉は本能で選ぶもので、その瞬間にはそれが〈機会〉だということはわからないのだ。
    上p.195


    モトカレミンというのは、アビケンナと同時代のイスラム教の神学者の急進派のことです。彼らが言うには、この世界は不慮の事故による微塵のようなもので、神の意志が一瞬だけ働いたことによって凝固した。つまり、神がその一瞬によそ見をしていたら、宇宙は粉々に砕け散っていたままで、無秩序な状態で原子が漂う無意味な存在だったというわけです。
    上p.385