貴方のことだよ

「余所の人のしたと云う罪咎を責めるには、わたしもどんなにか詞数が多かっただろう。
人のした事が黒く見える。その黒さが足りないので、一層黒く塗ろうとする。
そして自分を祝福して、えらい人のように思う。今は自分も犯しているのに。
だけれど、だけれど、それまでになる道筋は、まあ、あんなに好かったのに、あんなに美しかったのに。」
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『ファウスト』(森鴎外訳)